« Winny開発者逮捕で、警察敗北宣言? | トップページ | 非公式更新@2004年06月新刊 »

2004.05.11

書架より…@ローダン(300)

2004-05/上旬 発売
クルト・マール
早川書房 ハヤカワSF文庫 税込定価 \567(本体 \540) ISBN:4-15-011476-5
『宇宙英雄ペリー・ローダン』(300)「太陽系帝国の守護者」
Amazonで購入する
bk1で購入する。

 300巻と知って引かないでもよろし。丁度一区切りついて、新たな話しの幕開けです。

 先ずはこのシリーズの覚え書を。
 40年近く前に旧西独逸の複数の執筆者グループの連作で始まったこのシリーズは、日本では2月と6月を除く毎月上旬に刊行されている。1冊に2話ずつ収録されていて、各話をグループの中からランダムに一人が担当し執筆している。概ね100話、つまり50巻毎に一連の話が完結し、仕切り直して再スターとしている。だから、前半で前の話にオチがつき、後半から新たな話が始るこの巻は途中参加するのに打ってつけです。
 日本では、年に20話10巻刊行されていますが、先行している本国では週刊で1話づつ進んでいます。つまり差は広がっている。そうです。実は、未だ本国でも未完なのです。今現在本国で刊行されている最新刊が、今のペースで日本で読めるのは80年近く経ってから。2世代3世代に渡って読み続けている読者もいるとか…

<参考サイト>
rmldi

 このシリーズのタイプは、スペ・オペ。即ちスペース・オペラという、SFの中でも主に宇宙空間を舞台として派手な活劇を繰り広げると言ってしまえば、誤解は合っても遠くはないだろう。シリーズ名が示す通り、主人公は英雄として奉り上げられた神輿であり、彼を担ぐのが周りの多彩で魅力的なキャラクターたちである。数千年に渡る物語を綴るために、主人公らメインキャラクターはある話で不老となっている。物理的には死にえるのだが、生化学的には老化し老衰死はしない。主人公ローダンは、現代の地球人として初めて月に下り立った際に、異星人と出逢い彼らのオーバーテクノロジーを受け継ぐ。それから近隣の恒星系に出かけたり、地球の国家を統一したりと活躍し、遂には銀河系にいくつかの植民性を持つ星間帝国へと押し上げ、隣のアンドロメダ銀河やその先まで足を延ばしていくこととなる。
 このシリーズには、ミュータントと呼ばれる超能力者がいて、その超常能力で主人公の様々な窮地を救っているが、中でも取り分け名高いのがネズミ=ビーバーのグッキーだろう。童子くらいの背丈で一本牙をもつネズミ姿の彼は、ローダンが冒険の途中でであった異星人の友人の一人で、実にテレパシー・テレキネシス・テレポーテーションと言った多彩な能力を使いこなす人気者である。彼らミュータント以外には、球形を基本とし直径が2500Mに及ぶ巨大宇宙船や、戦闘を始めとする数々の目的のためのロボットたちも大勢登場する。ロボットの中には、小人になってしまった地球系植民星人が乗り込む物も出てくる。異星人の友人たちの中には、巨躯に四腕を持つハルト人のイホ=トロトもおり、彼の英知と活躍はローダンの窮地を度々救っている。
 ジュブナイルとしてはちょっと敷居が高いがSF(空想科学小説)としてはおかしくない、未来科学の用語や蘊蓄なども数多く登場し、物語の世界を重厚にしている。だがそれをそんなお約束のモノと思ってしまえば、科学に疎い子供でも波瀾万丈な物語を大いに楽しむことができる。基本は勧善懲悪といっても差し支えないと思うが、大宇宙を継ぐ者として定められたローダンに率いられた地球人ことテラーナーが、それを阻む様々な異星人や困難に立ち向かってはこれを解決していくのが基本筋といえる。長い物語の常として、100話(日本の50巻)毎に区切られるサイクルには、奇妙な舞台・頼もしいサブキャラクター、そしてどうして乗り越えればいいのかわからない困難な問題と敵が登場しては物語を彩っていく。伏線の張り方もどうした物で、なんでこんな小噺が挿入されているのか不思議だと思っていると、数十話・数百話を経てからひょっこりと続きがやってきて実はねと展開していくこともままある。

 300巻後半600話からの物語では、時は更に十数年進み、3456年8月20日になっている。冥王星の亡骸のある太陽系辺境で新たなエネルギー元の実験をローダンたちは行なう。実験は奇しくも不首尾となって終わり、一旦地球へと戻るのだが、その”地球”は実験に出かける前とどこかが妙に違っていた。何故ならば…
 このサイクルの敵は、ある意味、ローダンにとってこれまでにない最大の敵ではないかと思う。なぜならこの世で一番組みがたい相手であるのだから。それだけなら相手も同じだが、こちらが孤立無援に等しいのに、相手には強大なバックがある。そしてローダン達の第一の目標は、彼を倒すことよりも別にやることができてしまったこと。

 来たる6月が毎年恒例の休み月なので、7月まで続きはお預けとなる。その代わり、300巻到達を記念して本シリーズの解説本たるハンドブックの続編が10年振りに刊行される。それに合わせて、絶版状態だった1巻目も再販されるそうなので、この際揃えてみると300巻からのサイクルがよりいっそう愉しめることと思う。

1994-06/上旬発売
早川書房編集部編
早川書房 ハヤカワSF文庫 367P (本体580円) ISBN:4-15-011065-4
『ローダン・ハンドブック』(1)
Amazonで購入する。
bk1で購入する。

2004-06/上旬予定
早川書房編集部編
早川書房 ハヤカワSF文庫 税込み予価¥591(本体¥562)ISBN:4-15-011479-X
『ローダン・ハンドブック』 (2)
Amazonで購入する。
bk1で購入する。

 余談だが、ローダンを全巻揃えていれば、実にハヤカワSF文庫の5冊に1冊を持っている事になる。だが残念なこに、これから300巻を根性だして読んでみようかと思っても、出鼻をくじかれてしまうかもしれない。初期の200巻余りは重版未定で絶版状態。古本屋を回っても、中々全冊揃え難いかと思う。300巻で一区切りつくサイクルは、250巻後半から始るので、ここからなら揃え易いかもしれない。今から読んでいくのなら、次の月が待ち遠しかったり、ましてや休刊月の毎年2・6月を悶々とさせられることも無い。いかがだろうか?

|

« Winny開発者逮捕で、警察敗北宣言? | トップページ | 非公式更新@2004年06月新刊 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 書架より…@ローダン(300):

« Winny開発者逮捕で、警察敗北宣言? | トップページ | 非公式更新@2004年06月新刊 »